文筆家で女性用アダルトグッズ「ラブピースクラブ」代表の北原みのり氏が「女の本音」について、読者に語りかけます。2回目は「反・韓流デモについて」。(聞き手=神田憲行)
* * *
——北原さんの最新刊「アンアンのセックスできれいになれた?」(朝日新聞出版刊)のなかで、自分と意見が違う人を排除しようとする人たちについて触れています。反・韓流デモもそのように思いますか?
北原:背景には、人と意見が違うことをつきつめない特有の人間関係があると思います。たとえば私が講演やセミナーで話をしても、若い人は全然質問してこないんです。ちょっと挑発的に喋って「これ、聞きたいところじゃない?」と私が思うのに、黙っている。
人の価値観に踏み込まないで迂回するんですよ。20代から30代前半は深まった話は友達としないようにしてきたというんです。振られたら慰めるけれど、人生の話とか結婚の話とか、価値観が出てしまうのはすごく慎重になる。もしでたら「そうなんだ」と受け流す。価値観が違っていても、それをぶつけることはしない。
価値観が人とずれていることをすごく怖がっていて、逆にずれたら攻撃していい。ネットの世界ではそのストレスがストレートに来ている気がします。本当に可哀想ですよね、人が信じられないのだから。
——ただネットで悪口言っているだけでなく、デモという行動にまで結びつきました。
北原:フジテレビまで集まる行動力があるというのは驚きでした。信じているんですね、自分たちの「正義」を。「韓国人気持ち悪い」と叫ぶことにやましさとか恥ずかしさとかない。自分のことを客観的に捉えることが出来たら、恥ずかしいことじゃないですか。それが日の丸を立てて行動できちゃうのは今までにないことだなあと思いましたよね。国歌とか君が代とか汚さないでくれとあたしが思いましたもん(笑)。
人には「空気読め」といいながら、自分のことが全然見えてないんだろうなあ。あたしもブスのひがみとかよく言われたから、ブス男のひがみとかっていうのもアレなんですが(笑)。
でも男って、自分が幸せでないと女を虐めるからいやなんですよね(笑)。モテナイ君とか不細工な男の怨念て凄いですから。日本の政治家ってみんな不細工だから権力志向なんだと思いますよ。イケメンの政治家が増えないとこの国の政治は変わらないだろうなあと思う。
——北原さんは不細工な男に「こうやったらモテルよ」とかアドバイスされたりとかあるんですか?
北原:んーこれを言っちゃあいけないんですが、モテナイ君はモテるようになるんですかね?
——ヒドイ(笑)。
北原:でもモテナイ君て、こうやったらモテる! みたいなモテ本を読んでいるじゃないですか。でも実行してもだいたいモテませんもんね。韓流を見習えばいいじゃん。人の話をちゃんと聞くとか、面白い話をするとか。
女の人は自分磨きとかありましたけれど、男の人もやったらいいんですよね。「ありのままの自分を見て欲しい」とかダメですよ。髪の毛とかも綺麗にして、努力すべきですよ。反・韓流デモなんて、どこかで自分を肯定しきれない人たちの叫びでしょ。
不細工が尊敬されたいとか怖いですよね。ありのままの自分で女に認めて貰いたいとか無理な話だから、綺麗になる努力しろ。「電車男」なんて、神話ですから。俺がネットでかっこつけたこと書けばどこかでスゴイと思ってくれる女がいるとか、ない! ない!
【北原みのり氏プロフィール】1970年生まれ。女性のためのアダルトグッズショップ「ラブピースクラブ」代表のほか、文筆活動も行う。最新刊に「アンアンのセックスできれいになれた?」(朝日新聞出版刊)。